米29歳、予告通り死選ぶ

 新聞によるとアメリカでまだ若い29歳の結婚して間のない女性が脳の悪性腫瘍になり手術も不可能で余命半年と言われ、安楽死を選び、それまで住んでいたカリフォルニア州から尊厳死法のあるオレゴン州に転居し、医師から薬を処方してもらって11月1日に死ぬとインターネットでも予告していたが、予告通り薬を飲んで自宅で家族に囲まれて自殺したそうである。

 頭部のCTでは広範な腫瘍陰影があり、医学的には不治で余命の短いことも納得できるし、死までの頭痛や苦しみなども理解できるので、本人の選択は正しいと思うし、私でも同じ立場よなり許されるとすれば同じ選択を選んだであろうと考えるので私は彼女の選択を支持する。

 インターネットの予告には賛否両論の多くの意見が寄せられたそうである。日本ならこのような医師の関与した安楽死は自殺幇助になるが、彼女の場合にも、最後まで治療を受けるべきだとする意見もあったようである。しかし例え痛みを完全にコントロール出来たとしても遠くない死までの苦しみを彼女に忍従せよとは誰も言えないし、生命が神の意志だとしても本人の意志に反してそれが正しいとも言えない。

 しかしこういうことがあるからといって日本で準備されている尊厳死法の施行には安易に賛成することは出来ない。本人の意志が全く自由に決められることが前提であり、姨捨山のような社会的な風習や、現在社会でも見られる経済的、社会的な無言の圧力によって個人の意思決定が影響されることがない場合に初めて個人の意志が認められるのでなければ合法的な殺人に結びつかないとも限らないからである。

 ことに高齢化の時代に伴う経済的社会的問題を考え、心身障害者など弱者の意思決定を如何に守るかを考慮する時に、余程しっかりした方策が伴わなければ安易な尊厳死法や安楽死法の制定は極めて危険な落とし穴を用意することになりかねないことを知っておくべきであろう。